声明文

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昏迷状態にある地下鉄サリン事件の死刑囚に治療を受けさせ、国は真相解明に取り組んで下さい!

23年前の1995年3月20日の朝、東京・霞が関駅を通過する地下鉄車内で猛毒の化学兵器・サリンが散布されました。

市民を無差別に狙った戦後史上最も凶悪な犯罪とも呼ばれる「地下鉄サリン事件」です。

この事件で13人が亡くなり、5800人以上が負傷。今も多くの人たちがその後遺症に苦しんでいます。

実行したのはオウム真理教の信者や教団幹部たち。教団はこの他にも1989年2月〜1995年3月の間に、「坂本弁護士一家殺害事件」や「松本サリン事件」など他にも凶悪犯罪を引き起こしており、その後の裁判で13人に死刑判決が下されています。

この一連の「オウム事件」の主犯者とされたのが教団の教祖、麻原彰晃こと松本智津夫です。

小中高と熊本県内の盲学校に通い、鍼灸師として生計を立てたのちに、32歳でオウム真理教を設立。しばらくして全盲となります。

地下鉄サリン事件当時は40歳。全国に約1万人の信徒を抱え、ロシア支部なども設ける宗教団体となり、日本全国に知られる大きな教団を率いていました。

彼らはなぜ社会の根幹を揺るがすような事件を引き起こしたのか。

真相解明のため裁判での審理に注目が集まりましたが、実はその裁判の中で麻原が自らの口で事件の詳細を十分に語ることはありませんでした。

東京地方裁判所で行われた一審の途中から不可解な行動が目立つようになり、裁判官や検察官、弁護人とまともにやり取りができなくなりました。

精神の異常を自身で偽る「詐病」が疑われる一方で、精神疾患を発病している恐れも指摘されましたが裁判は継続。「指示を受けた」とする弟子たちの証言などから、2004年2月、死刑判決が下されます。

この頃、東京拘置所に収監された麻原の様子はさらに不可解に。支離滅裂な言動に加え、面会に来た弁護人や自らの娘たちの前で失禁をしたり、自慰行為を繰り返すこともあったと言います。

弁護側の控訴審請求を受け、東京高等裁判所は、専門家の西山詮医師に麻原の精神鑑定を依頼。西山医師は「拘禁反応はあるが、訴訟を続ける能力を失っていない」との鑑定結果を裁判所に提出しました。その鑑定結果の中で麻原のこうした状況を「昏迷状態」と表現しています。

一方で、弁護側の依頼で麻原に接見した7名の精神科医たちは「コミュニケーションが図れる状況ではない」として、精神疾患の治療が必要だと意見を述べています。

2006年3月、東京高裁は弁護側の控訴請求を退け、裁判は開かれませんでした。2006年9月、一審の死刑判決が確定し現在に至ります。

2008年春以降、弁護士も家族も麻原自身と面会をすることができていません。その理由を法務省・東京拘置所側は「本人が面会を拒んでいる」と説明しています。果たしてその状況が正しいのか、そうでないのか私たちは国からの限られた情報以外に判断する術を持っていません。
そうした状況が10年以上続いてきました。

複数の精神科医が、麻原への治療を行えば、今からでもある程度証言能力が回復する可能性があると指摘しています。公開された情報では拘置所側がこれまで麻原を治療をした形跡は見られません。

家族でさえ拘置所内の死刑囚の状況を知るのは困難な状況です。

国連の人権委員会やアムネスティ・インターナショナルなど、国際的な団体が日本政府に対して監獄内の人権状況を改善するよう勧告を出しています。弁護士で作る日弁連も死刑囚への治療を求める勧告書を国に提出しています。

なぜ凶悪な犯罪が引き起こされたのか、真相を究明するため国はやれることを全てやりきったと言えるのでしょうか。

私たちは国に対して求めます。

麻原彰晃こと松本智津夫に対して、死刑執行前に精神疾患に対する治療を速やかに行い、その情報を公開することを要請します。

 

オウム事件真相究明の会

2018年6月29日 13:00更新